正しいPMI講座

企業買収後のプロセスで重要なPMIについて徹底解説

2021/05/01正しいPMI講座

M&Aはクロージングして終わりではない

M&Aは、会社の売買という大変なプロジェクトです。ようやくM&Aが終わってめでたしめでたし、というわけにはいかないのが現実で、本質的にはその後のプロセスである「PMI」こそがM&Aの成否を決める大切なポイントになります。

PMIは「Post Merger Integration」の略語です。

主にM&Aが成立した後に、両企業の

・経営方針

・業務に関するルール

・従業員の意識

などを結合させてスムーズに「M&Aの目的」を実現させることです。

M&Aが思うようにいかない原因として事前準備がしっかりできていないことがほとんどで、そこを防ぐのもなかなか難しいのが現実です。ですので、M&Aの締結直後にPMIの計画を立てる際にはPMIの専門家であり、成功に関するコツを理解する我々のようなプロからレクチャーを受けることをおすすめします。

実際にPMIの重要性や内容についてご説明します。

PMIの重要性

PMIにおいて、大きく3つのポイントに意識を向ける必要があります。
統合相手の企業価値や組織の体質をしっかりと見極めておかないと、M&A契約締結の後に想定外の不安要素を抱えてしまう恐れもありますので注意しましょう。

シナジー効果

M&Aによってどのようなシナジー効果を期待するのか、ということを事前にしっかり共有認識を合わせておく必要があります。この部分をしっかりとしておかないと、かえってマイナスの効果を生み出してしまう可能性すらあります。

アンゾフの成長マトリクス

シナジー効果を導き出すための方法として、「アンゾフの成長マトリクス」という代表的なフレームワークがあります。事業領域がどのように拡大する可能性があるのかを予め描くことでM&Aを行う目的の軸がブレることなく交渉を遂行することができるでしょう。図にまとめたのでご覧ください。

市場浸透戦略

市場浸透戦略は言葉の通り、既存の市場(顧客)に既存の製品を販売する戦略です。
もっともリスクの低い、ビジネスを展開しやすい戦略です。
規模・売り上げの拡大もしくは、規模経済によるコスト削減等のシナジー効果を得ることができる企業とM&Aを行った際に最も成長が期待できる領域となります。

新製品開発

新製品開発戦略は、既存の市場に向けて新しい製品を開発する戦略です。
製品開発に向けて研究施設・製造の設備・従業員等、新たに投資を進めていくので、市場浸透戦略よりもリスクが高くなります。

自社とは違う製品を手がける企業とのM&Aを行うことで、更なる開発力を望めます。

新市場開拓

新市場開拓戦略は既存の製品を新しい市場に販売していく戦略です。
今までにないエリアやターゲット、これまでアプローチをしてこなかった市場の開拓を行います。
あらかじめ事業の拡大が見込める、適した市場を特定するためには、より一層専門的な調査や分析が必要になるため、やはり市場浸透戦略に比べるとリスクは高くなります。

自社には無い販路や地域、事業を持っている企業の買収で、新市場への拡大が図れることと同時に収益のアップも期待ができます。

多角化

多角化戦略は、新しい市場へ新しい製品を開発して販売していく戦略です。
つまり、今までに馴染みのない市場・製品分野に対しての進出となるので、4つ戦略の中でもっともリスクが高い戦略とされています。
見方を変えれば、自社の既存企業の衰退に備えるためのリスク分散が可能な戦略でもあります。

多角化戦略では、自社のノウハウが活用できるような関連性のある企業がM&Aの候補先になるでしょう。
上記のイメージを踏まえて、どのようなシナジー効果を得たいのか、そのためにはどのような企業を買収することで成功につながるのか、ある程度イメージしておくことが大切です。

企業文化の違いを配慮する

M&Aは2つの企業を1つにまとめる過程を経るので、お互いの企業の違いに十分な配慮が必要です。異なる文化や風土の中で育成された人材が交われば、どうしても摩擦は生じてしまいます。両者に対して、適切なすり合わせが必要です。

そして、M&Aにおいてもっとも避けたいのは優秀な人材の流出です。
優秀ゆえに、「あの企業に買収されるなら辞めます」「あの企業を買っても業績は悪化するだろうから転職しよう」などと考えることも想定されます。経営者やM&A担当の専門家としてはこのような「誤解」をPMIを通じて払拭する必要があります。

また、経営者はM&Aが買い手企業による「支配や征服」では決してないことを伝え、M&Aの目的や成長への希望を明確に説明しましょう。

M&A後のマネジメント

クロージング後に、企業価値を生み出してこそ、M&Aの本来の目的を達成したといえます。企業価値を生み出すためには、両企業のギャップをクリアすることが重要なポイントです。

企業のマネジメントが両方とも同じレベルだと、経営のレベルが低くなる可能性がありますので注意しましょう。反対に企業間でマネジメント力に差がある場合は、優れた方の経営が導入される傾向が強いのでシナジー効果の期待もできます。

PMIの手順

PMIは大きく分けて

・人や企業文化の統合

・業務の統合

・システムやインフラの統合

の3つの課題を解決するために実行していくのがスタンダードな流れです。
M&Aがクロージングした後に、お互いの企業・経営陣がしっかりと各課題に向けて入念なコミュニケーションを繰り返して、すれ違いがないようにすり合わせを行います。

人や企業文化の統合

人と企業文化の統合はM&Aにおける大きな課題である「人材の流出」を防ぐためには必ず行わなければいけないフローです。従来付き合いがある企業同士の従業員でも、いざ一緒に業務を行ってみれば感覚や関係が変化して、認識や価値観の誤差から摩擦が起きていく恐れもあります。

異業種の企業によるM&Aでも、根本にある経営理念や社風等がずれる可能性があります。従業員同士の連携が難しくなり、果ては従業員間での対立まで起きてしまいます。また、企業間での上下関係が認識できてしまうと派閥が生まれることもあるので注意しましょう。

両企業の経営陣は、従業員目線での意識・価値観の差・企業文化の摩擦の有無をしっかりと理解する必要があります。そのうえで、適切な業務が行えるように配慮をしましょう。

業務の統合

両企業にはお互いにそれぞれの、理念・経営戦略・マネージメント・現場の状況があり、それぞれをお互いに合致させることが必要不可欠です。

お互いの考える常識が相手にとっては同じように考えられないことも珍しくありません。
買い手企業と売り手企業は、何度もミーティングを行うことで、お互いの認識をすり合わせていくことも重要です。

また現場でしかわからないことも多いので、両企業が力を合わせて営業・財務・法務・税務等の様々な視点から分析を行う必要があります。業務のノウハウ・全体的な流れ・従業員の働き方などの傾向をしっかりと把握して、統合に反映させていきましょう。

システムやインフラの統合

企業のシステムやインフラの統合もPMIで解決すべき課題です。
システムをはじめとして、人事・経理・総務・支払ルールなど基本的な企業の構成要素は、簡単に統合できるものではありません。M&Aによって、両企業のそれぞれの部署の負担が倍増する恐れもあります。

この負担によって部署の調和が取れなくなったり、混乱を生み出す原因となるため両企業の経営陣は、従業員にPMIを行う意味をしっかり説明をして負担が減らせるよう、的確な指示を出すことに努めましょう。

PMIのメリット

PMIがどれほどM&Aにおいて重要なポイントであり、必要なプロセスであるかはご理解いただけたかと思います。メリットとなる要素もここで確認しておきましょう。

業務の効率化やコストの削減への期待

PMIを行うことで、業務の効率化がひとつの目的になります。
それぞれの企業で同じ業務を行う従業員たちを、従来のまま同じ配置で業務を進めてしまうと非効率になる可能性があります。従業員たちの再配置を、多くの場所で検討し実行することで重複してしまう無駄が減り、効率化を図ることができます。

そして効率化をするということは、コストを削減することにも繋がります。
再配置できない従業員の離職等もふまえて対策を考えることは経費の削減にもなります。重複する業務そのものを統合することで、不要となる設備の売却なども考えられるでしょう。

PMIの実施では、こうしたコストの削減や効率化なども重要な課題です。

統合のリスクを低減

例えば、吸収合併などにより売り手側の企業が消滅する際に、存続する買い手側の企業のパワーバランスが強すぎるてしまうと、亀裂が生じやすくなります。

このような発生しうるリスクを、PMIを実行することであらかじめ想定して対策を練っておくことができます。両企業のすり合わせがバランスよく行えれば、企業ごとの従業員によるトラブルや、人材の流出を防ぐ対策にもなり、新しい経営体制にもスムーズな以降が可能です。

企業理念や戦略を浸透させることができる

M&Aのプロセスでは、両企業のマネジメント層たちが面談の場を設けて意見交換をします。ここで、M&Aにおける条件の確認であったり、意思の確認が行われると同時に両企業の企業理念や経営戦略が話し合われます。

PMIを行うことで、両企業の経営陣たちが考える経営戦略や、企業理念をより明確に具体化して従業員まで落とし込むプロセスを練る必要があります。仮に両企業の上層部たちが意気投合できても、実際に現場で働く従業員たちの意識が変わらないことにはM&Aの成功はないからです。
PMIにより、このような問題解消を目指すことが可能です。

PMIのポイント

ここまで様々なお話をしてきましたが、厳密に最初から最後までみっちりPMIを行おうとすると膨大な時間がかかってしまい、M&Aそのもののタイミングを見失ってしまう恐れもあります。ポイントを絞って効率よくPMIを行いM&Aの成功に繋げましょう。

期限を決めて行う

PMIを行うにあたって、ある程度の期限を決めて優先順位の高いものから取り組んでいくなどの計画が必要です。
そのなかで、想定外の事態や出来事が発生した際にも柔軟に対応できるような計画を立てましょう。その後、PMIを行っていく中で経過とともに当初の計画を変えたり、状況に合わせて随時見直すことも大切です。

すり合わせることを意識しすぎない

M&Aにおいて、両企業の様々な部分のすり合わせが大切だということは、これまで何度もお伝えしてきましたが、事業や経営理念をただすり合わせることが目的になってはいけません。
両企業のトップや経営幹部はM&Aを行った後の企業価値をあげるために、どういった変革を重点的に行うか、それに伴うスピードや方向性・将来像などの経営ビジョンについてしっかりとコミュニケーションをとり、意識の共有を重ねていく必要があります。

すり合わせがお互いに気を使いすぎて、ただ両企業にとって都合の良い事業活動になるのではなく、M&A後の企業が今まで以上に成長できるかを考慮したすり合わせを行えるようにしましょう。

PMIを行うスピードに注意する

PMIに時間をかけすぎてもいけませんが、反対にスピードが速すぎても現場の従業員たちがついていけずに、労働に対するモチベーションや現場のオペレーションなどに混乱が起きてしまう恐れも考えられます。

効率よくPMIを行っていく上で、M&Aに向けた変化の必要性について、現場の従業員たちが納得ができるようにしっかりとコミュニケーションを重ねることが必要です。またそれに伴い、経営のトップや幹部の力強いリーダーシップとマネジメントが欠かせません。

PMI総研でできること

M&Aの締結が完了したらPMIの計画を立案しますが、記事でもお伝えした通りPMIを成功させるために抑えるべきコツは多岐にわたり、難しく感じてしまう方も多いのではないでしょうか。このような場合は豊富な経験と知識を有するプロからレクチャーを受けることでサポート体制を整えることをお勧めいたします。

最後にPMI総研が提供するサービスから、一例をご紹介いたします。

PMIセミナー 「PMIに成功している企業は何をやっているのか?」(60分のセミナー)

セミナー内容:互いに硬く手を握りあったM&A調印式。その後いったいなにがM&Aの成功と失敗を分けているのか?この記事でも紹介した PMI(経営統合)を成功に導いた事例、失敗してしまった事例を誰よりも取材したPMI総研編集長が事例と明暗をわけた分岐点をお話しします。