正しいPMI講座

M&Aの経営統合とは

2021/05/01正しいPMI講座

経営統合とは

経営統合とは、大きく2つに分けることができます。

・買い手企業が売り手企業の株式だけを保有して別会社として存続する
・売り手側企業が買い手側企業に吸収されてひとつの部門として存続する

というパターンが多く、実際は前者の「買い手企業が売り手企業の株式だけを保有して別会社として存続する」がほとんどです。
後者の場合は、システム会社を自社のシステム部門として吸収するようなケースです。

次に吸収合併と経営統合の違いについてご説明します。

吸収合併と経営統合の違い

簡単にいうと、大きな違いは、一緒となる企業が全て残るのか、残らないのかということです。経営統合とはそれぞれの企業が残ることになり、もう一方で吸収合併とは一社のみが残ることになります。それぞれまとめてみます。

①会社の数

吸収合併

吸収合併の状態になると、原則としては残る企業が1社のみになり、取り込まれた企業は消滅することになります。新設合併となれば新しい企業が増えますが、その新しい企業に取り込まれる全ての企業が消滅します。

経営統合

経営統合とは、2社以上のグループ企業同士が連携し、協力してそれぞれの事業を行う「グループ経営」を行う形態です。
統合した全ての企業もそれぞれ法人格(社会の中で法人として認められ、人材や技術などを保有する権利)が残る状態です。

②企業内のシステム

吸収合併

就業規則・経営処理などの企業内におけるシステムをひとつにまとめなければいけません。
というのも、システムをまとめないで企業の運営がなされると随所で混乱の原因になってしまいます。

経営統合

経営統合の場合は、別の企業として残るのでそれぞれのシステムをまとめる必要はありません。
あくまで、法人格が独立しているからシステムが統合前と同じなだけで、本来であればシステムをまとめる方が効率的な運営が実現できます。システムをまとめることがマストではないというだけです。

吸収合併と経営統合のメリットとデメリット

企業やグループにとっては大きな転機となることは間違い無いですが、その一方で思わぬ失敗によって社内外に大きな混乱を招いてしまうリスクもあります。しっかりと、メリットとデメリットを把握して多面的に検討ができるようにしておきましょう。

吸収合併の4つのメリット

組織がシンプルになる

一般的に、数多くの企業をマネジメントすることは非常に難しく、大変な労力を要します。
企業がひとつになることで、シンプルに管理することが可能になり適切なコントロールができるようになります。

さらに、これまでは個々で発揮していた力が組織としてひとつになることで、協働して得ることができるシナジー効果も期待できます。さまざまな事業部門が近い関係となることで、今まで以上の事業展開を望むことができます。

信用力が上がる

合併することで、組織の規模が大きくなるので財務の面では信用力が大幅に上がります。
さらに、これまで以上に強い組織としてのブランド力を全社で共有することができるようになります。例えば、「ホンダの子会社」というよりも「ホンダ自動車」の方が一般的には信用が高いといえます。

従業員のモチベーション増加

全員がそうとは限らないので注意が必要ですが、同じ仕事をするとしても大きな企業の子会社としてよりも、大きな企業そのものの従業員でありたいという人は少なくありません。
この点においては対外信用力と同じことが言えます。

節税効果

税務に関するメリットとしては、黒字事業の利益を赤字事業の損失と相殺することができるので、大きな節税を図ることができます。場合よってはグループ企業が持っている過去の累計赤字を取り込むことができる場合もあります。この点において、合併の仕方によっては取り込めない場合もあるので、必ず専門の税理士に確認が必要になります。

吸収合併の4つのデメリット

コストがかかる

合併をすることで人員増加によるコストがどうしても増えます。雇用を維持することが前提の場合が多いですが、状況によっては早期退職制度を行う場合もあります。また合併による企業間での給与水準の格差をなくそうと、水準が低い側の従業員の給与を引き上げざるを得ないなども要因としてあります。

準備不足による混乱

専門家を通じて企業の事業状況や税務の状況などの事前調査は不可欠です。あらかじめ、業務フローや事務負担の見直しを適切に予測しておくことで、今まで以上に洗練された業務体制で合併へと望むことができます。

従業員の精神的なストレス

長く勤めていた従業員にとっては、企業が消滅する場合、その精神的ストレスは大きいものです。合併をきっかけにこれからの事業の発展や、待遇が改善されるなどの「メリット」を明確に伝え、合併を前向きに捉えることができるようにしましょう。

また、合併が原因で業務量が増えることや、業務の線引きが曖昧になるなどでストレスが増えることもあります。過負荷を与えずに働けるように合併のスケジュールを組むことが大切です。

吸収合併になると、吸収され消滅してしまう企業側の従業員は立場が弱く、吸収側の従業員が差別意識を持つなどの不当な扱いが起こる可能性もあります。吸収される側の従業員が肩身の狭い思いをしない気遣いが大切です。

組織の機動力がなくなるリスク

一般的に、組織というものは大きくなればなるほど機動力がなくなると言われています。
場合によっては小さなグループ会社の方がメリットがある場合も否めません。適切な組織のサイズを考えて調整することも必要です。

ですが、ひとつの大きな企業の方が全体を動かす力は強くなります。

ミーティングをできるだけ少人数で行い、密にコミュニケーションを取るなどの工夫や、役職に関係なく、相互に自分の意思をはっきり示せる場を設ける。そのような工夫をすることができれば数十人規模でも、数千人規模でも機動力を失うことはないでしょう。

経営統合の3つのメリット

リスクの軽減

経営統合を行った各会社の事業は独立しています。合併となれば、ひとつの事業会社となるため、仮に経営が傾いてしまうと、共倒れになるリスクが生じます。しかし統合の場合は各子会社が独立していることで、ひとつの経営が傾いても他社に影響が及ぶことがなく、リスクの軽減につながります。

システムの統一が必要ない

経営統合の場合は合併と違い、各社がそれぞれ独立しているので従来のシステムや人事制度を継続することができます。合併で生じる課題として両企業の制度変更等により、従業員のモチベーションや労働意欲の低下につながる恐れがありました。

経営統合ではそのようなリスクを回避することができます。

競争を生む環境

合併のデメリットの面で、両企業の対立や立場の違いをあげました。しかしそのデメリットも統合となれば元々、別の企業が子会社としてグループになることで競争を生みやすい環境になります。競争が生じることで、優秀な後継者が育つという面ではメリットのひとつです。

経営統合のデメリット

シナジー効果が得にくい可能性も

経営統合の場合は、もともとある各子会社の独立性を保ちながら事業が運営されていくので、ノウハウや情報を共有する機会に欠ける恐れがあります。そうなると各事業会社間での協調性が生まれにくい面があります。大きなシナジー効果を生む合併と比べるとあまり期待はできません。

コストが増える

合併と違って、統合の場合は複数の企業の基盤が保持されるため、人事や経理などの間接部門の重複が起きてしまいます。重複の分はコストが増えますし、各企業が独立して運営していることからこの課題を解消するのは難しく、その分のコストを下げることは、困難とも言えるでしょう。

業務効率への影響

統合の場合は、独立してそれぞれの企業が事業を運営しているので、連携が難しくなります。また、先程の統合のメリットで「システムの統一が必要ない」と伝えました。悪く言えば、連携の取れない各企業の異なるシステムはグループ会社の会計処理などの業務効率を下げる可能性もあります。

協調性をたもつためには、子会社間のコミュニケーションが不足しないように気をつける必要があります。

スムーズなPMIのポイント

PMI(Post Merger Integration)はM&Aが成立した後に、お互いの企業の経営方針やルール、さらには従業員の意識をまとめて、M&Aの目的をスムーズに実現するためのプロセスのことです。

PMIを適切に、スムーズに進めることはM&Aを成功につなげる大切なポイントです。M&Aが成立する前に、売り手側と買い手側の企業それぞれの従業員・企業文化・社内制度などを考慮した経営管理体制を組み立てることが大切です。

M&Aを検討している段階でPMIに関する計画を策定しておき、従業員とともに意識の面や業務の面を進めていくことが、M&Aの成功と相乗効果を生み出すことになります。

PMI総研でできること

最後にPMI総研が提供しているサービスの一例をご紹介します。

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