PMI失敗事例

【M&A失敗事例】失敗しないために気をつけることは?M&Aを成功に導くアドバイス

2021/07/20PMI失敗事例

M&Aにおけるゴールは、会社の売買やクロージングのタイミングではありません。「買収後に最大のシナジーを生み出す」ここまで実行し、ようやく意味を持つのです。

今や多くの企業がM&Aを実施していますが、デロイトトーマツコンサルティング株式会社が発表した「M&A経験企業にみるM&A実態調査(2013年)」によると、調査対象224社のうちM&Aの成功を認めているのは全体の36%ほど。「M&Aは成功だった」と評価する企業が少ないのが現状です。

M&Aを成功に収めるためには、どんな点を注意するべきなのでしょうか?そこで今回は、実際にM&Aを経験した方にインタビューを実施しました。M&Aの失敗事例からその原因を探り、対策を立てていきましょう。

M&Aの失敗とは?

多くの企業にとってM&Aは、事業の強化および拡大を目的に行われています。つまり、その目的が達成できていれば「成功」、達成できなければ「失敗」と評価されるでしょう。

M&Aの失敗1:買収後に損失が発生した

売り手企業の財務状況をはじめとする細やかな情報を精査するデューデリジェンス(DD)を行います。しかし、ここの調査が甘いと債務やリスクも引き継いでしまうことになります。場合によっては粉飾や不正会計が発覚し、経営が悪化してしまう可能性も。

また、買収金額の算出は対象企業の「のれん代」も加算されます。のれん代は、正確な評価を決定するのが非常に難しいため、のれんの減損損失を計上しなくてはいけないケースも考えられます。

事業の拡大や発展を目的としてM&Aにおいては、想定外の債務やリスクといった損失を抱えることは「失敗」と評価せざるを得ないでしょう。

M&Aの失敗2:投資に見合う効果が得られなかった

投資対効果が見合わず、買収時に支払った金額を回収できないケースもM&Aの失敗といえるでしょう。対象企業を買収したいと考えている競走企業がいる場合は特に、買収額が高騰する可能性があります。

「企業を買収したい」という思いが強くなればなるほど、高値掴みをしてしまうケースも多くなるため、冷静な判断が求められます。

M&Aの失敗3:企業イメージが悪化してしまった

事前の調査や認識が甘いと、買収することで買い手企業側のイメージダウンにつながってしまう可能性も否定できません。特に文化圏が異なる海外M&Aに発生しやすい事例です。

国内企業においても、売り手企業側のハラスメント問題やコンプライアンス問題、その他の訴訟に関するリスクなどを一緒に引き継いでしまう可能性があるため、やはり事前調査は手を抜けません。

 

M&Aが失敗する理由

M&Aを成功に導くためには、失敗する要因を知って対策を立てる必要があります。M&Aで失敗する要因はどこにあるのでしょうか?

失敗する理由として挙げられるのは、以下の通りです。

【M&Aが失敗する理由】

・M&A戦略や目的の明確化ができていなかった
・デューデリジェンス(DD)が甘かった
・「買収すること」をゴールだと考えていた
・経営統合プロセスに失敗してしまった
・社員、従業員流出を防げなかった

 

1:M&A戦略や目的の明確化ができていなかった

M&Aを検討しはじめたらまず、目的を明確化することが重要です。

この部分がぶれていると重視すべき軸が定まらないため、交渉が難航します。一貫性を持った交渉を継続するためにも、目的を明確にし、目的に沿った戦略を立てましょう。

2:デューデリジェンス(DD)が甘かった

デューデリジェンスをしっかり行っておかないと、想定外の債務を抱えてしまう可能性があります。売り手側企業が抱える簿外債務については特に入念に確認すべきです。

3:「買収すること」をゴールだと考えていた

選定や交渉が難航してしまうと、「買収すること」をM&Aのゴールに設定してしまいがちですが、しかし、M&Aにおけるゴールは経営統合を経て事業拡大やシナジー効果を生んだ地点にあります。

4:経営統合プロセスに失敗してしまった

M&Aの成功を大きく左右するのが、経営統合プロセス(PMI)。買収によって得た資源を効率よく活用する方法を定めたり、両企業の経営方針や業務に関するルール、従業員の意識などを結合させたりすることを指します。

働いている社員や従業員に大きな混乱や不安を招いてしまうことで、業務効率が著しく低下する可能性も考えられます。PMIを甘くみていると、せっかく実施したM&Aが失敗に終わってしまうでしょう。

5:社員、従業員流出を防げなかった

不満・不安が重なり、社員や従業員が自主退職してしまうケースも少なくありません。

専門的なスキルやノウハウを有したスペシャリストともいえる人材が流出してしまうのは、企業にとって大きな損失です。

 

【インタビュー】M&Aの失敗事例


今回インタビューに答えてくれたのは、今まで4社の企業買収に携わったという40代前半の男性、A氏。実は、いくつか失敗事例もあるそうです。

そこで、これまでの経験をもとに、「M&Aを実施した目的」や「M&A後の結果」、「成功するための秘訣」などをお話しいただきました。実際のM&A経験者の生の声と、成功に導くアドバイスをお届けします。

―買収したのはどのような企業ですか?また、M&Aの目的について教えてください。

はい。今まで買収したのは、4社になります。今回はその中でもサプリメントを販売しているメーカー(以下、A社)と、ベンチャー企業(以下、B社)についてお話したいと思います。

まずA社の売上高は約60億、従業員は正社員25名、パートや派遣社員は20名ほど。
M&Aの目的は、ズバリA社が持つ顧客リスト!アクティブ・休眠含めた顧客の件数が多かったので、価値があると判断しました。

一方B社は、ベンチャー気質な企業だったので、若く勢いのある人材がそろっていましたので、A社では「顧客リスト」、B社では「人材」を目的にM&Aを行いました。

 

―M&A後の結果はどうでしたか?

正直なところ、結果的にはどちらも「失敗」になってしまったかな、と。
まずリストを目的に買収したA社は、「リスト自体の質が想定よりも低かった」ことが判明しました。これがM&Aの難しさなのですが、事前調査を行っていても実際に買収するまでわからない部分があるんです。

A社だと「リストにある顧客数」はわかっても「リストの質」までは判断できません。買収してはじめて発覚する事実もあるため、ここを見極めるのは非常に難しいですね。

「人材」を目的に買収したB社ですが、経営統合(PMI)が上手くいかなかった影響もあり、コアメンバーが次々に退職してしまう事態に陥ってしまいました。

私は、M&Aの成功は90%は人で決まると思っています。

このときB社のPMIプロセスを担当していた者の「誤ったやり方」を間近で見ていて、M&Aは「人にはじまって人で終わる」「企業文化や風土を尊重して、モチベーションを維持する必要がある」ということを痛感しました。

 

―改めて、失敗の理由はどこにあったと思いますか?

1つ目は、買収前の調査が足りていなかったことでしょうか。とはいえ、買収してはじめて発覚する事実もあるので、見極めるのはかなり難しいんです。それでもデューデリジェンスの徹底は、買収後のギャップを埋めるためにも有効ですね。

またこれは、M&Aを検討している企業全体に言えますが、「買収をゴール」と思わないことが何より大切。会社って、勢いを止めると終わってしまうんですよね。

買収したことに満足せずに、買収した後どうやって配置していくか、どうやって展開していくかを事前に徹底的に議論し、決めておくべきだと思います。

2つ目は効果的なPMIを実行できていなかった点です。従業員は「待遇が良くなるから」という理由だけで同じように働いてくれるわけではありません。

むしろ、会社のために尽力してくれていたコアメンバーや優秀な人材ほど、不満や不安を感じやすいんじゃないですかね。

なので、条件面をそろえるだけでは、意味がありません。先ほどもお話した通り、「M&A成功の90%は人にある」と実感しているので、企業文化や風土を尊重し、信頼関係を築いていくことが何よりも大切になってくるでしょう。

 

―それでは最後に、M&Aを成功するための秘訣やアドバイスがあれば教えてください。

会社を支えているのは、「人」です。
ついつい商品やサービスといった「モノ」を優先させてしまいがちですが、最も大切なのは働いている社員や従業員。経営統合(PMI)を丁寧に行うことが、M&Aを成功に導く最大の秘訣ですね。

実は、買収した4社目(以下、C社)に当たるのですが…。
C社は過去の失敗を活かし、結果的に「成功」となった買収例です。C社買収時の目標は「はじめに定めた離職して欲しくない人材が、離職しないこと」。

対象社員は20名ほどいましたが、離職率ゼロを実現できました。B社を買収した際の失敗事例を見ていたので、今回は自分自身が現場に入り、経営統合の指揮を取ることに。遠方の企業だったので通うのは大変でしたが、それでも週2回ほど直接足を運び、社員とコミュニケーションを取り続けました。

そういう取り組みが離職率を抑えることにつながって、「はじめに定めた離職して欲しくない人材が、離職しないこと」という目的を達成できたのだと思っています。

 

ちなみに、これは他社の話ですが、面白い事例がありまして。
その企業は買収後、まるで転げ落ちるかのように売上が落ちていったそうです。そこでとある社長を外部から招聘したら、一気に売上が伸びたのだとか。

この社長さんは、大きな慰労会などを積極的に行ったそうです。どのやり方が適しているのかは企業によっても変わってくると思いますが、コミュニケーションを取ることでチームマネージメントが上手くいったと聞いて、「M&Aは人と人のつながりが重要」と再認識するきっかけになるエピソードでした。

あと、もうひとつ知っておいて欲しいことがあって。デューデリジェンスは、マーケターや営業の意見も取り入れた方がいいと思います。現場の肌感を知っているのは彼らです。会計担当だけで進めてしまうと数字だけで判断してしまうので、A社のリストのように買収後ギャップが生じるリスクがあるんですよね。

信頼関係を築く、経験を積む、風土や人を尊重すると共に、デューデリジェンスはマーケーターや営業の意見も取り入れる、というのがM&A成功の秘訣なのではないでしょうか。

 

M&A成功のカギは、PMIにある

PMIを成功に導くサービスを提供している弊社が、数々のM&Aを終えた企業に取材してわかったのが「売り手企業の従業員にM&Aの目的と未来を共感・納得してもらう」ことの重大さです。

インタビューでもあったように、企業をつくっているのは「人」です。せっかく良い企業を買収できても、優秀な人材が流出してしまったり、モチベーションの低下により業務効率が落ちてしまったりしたら、満足のいく結果は残せません。

M&Aを成功に導くカギは、PMIが握っているのです。しかし、企業風土や文化が異なる会社を取りまとめ、関係を築いていくことは容易ではありません。

私たちPMI総研は、PMIを成功に導いた事例や失敗事例などを解説する「PMIセミナー=PMIに成功している企業は何をやっているのか?」や、従業員の不安を解消する「コミュニケーションレター」など、経営統合をスムーズに進めるためのサービスを提供しています。M&Aを成功させたいなら、経営統合のスペシャリストである弊社にお任せください。