正しいPMI講座

M&Aのクロージングとは?流れや期間、必要な手続きをわかりやすく解説します

2021/08/18正しいPMI講座

M&Aについて調べていると、「クロージング」というキーワードをよく目にしますよね。

M&Aにおけるクロージングは、株式や権利権の引き渡しおよび取得対価の支払いが完了させる手続きのこと。つまり、最終契約書に基づく最終的な手続きを行なった状態を指します。

M&Aの最終局面であることは想像できるものの、「実際にどのような流れで行われているのか」「どのような手続きが必要なのか」など、イメージが湧きにくい部分もあるのではないでしょうか。

そこで今回は、

・M&Aにおけるクロージングについて詳しく知りたい
・クロージングの内容は?
・クロージングに必要な手続きって?

といった疑問を抱える方へ向けて、M&Aのクロージングについて詳しく解説していきます。

 

1.M&Aにおけるクロージングとは

M&Aにおけるクロージングとは、最終契約書に基づくM&A取引が実行され、経営権の移転や株式譲渡および取得対価の支払いを完了させる手続きのことをいいます。

売り手側による譲渡物の引き渡し、買い手側は対価の支払いを行うことが一般的ですが、その内容はスキームごとに異なっています。

例えば株式譲渡を目的としたM&Aであれば、売り手側が買い手側に株券を引き渡し、買い手側は売り手側に株式代金を支払う手続きで完了します。クロージングが完了した時点で、正式に経営権が移り「M&Aの成約」となります。

一方、事業譲渡の場合は経営権の移転に伴って、さまざまな資産も引き渡す必要があるため、その分手続きも多岐に渡ります。

 

2.M&Aのクロージング条件とは

クロージング条件とは、取引の実行で譲れないラインを取り決める一定条件のことで、「クロージングの前提条件」ともいいます。このクロージング条件を満たすことができなければ、取引は進められません。

このクロージング条件の内容は、売り手側と買い手側で合意した最終契約書によって定められ、双方の希望によって変わってきます。

具体的には「M&Aについて役員や主要取引先から同意を得ている」「ディーデリジェンスで問題が発覚したら、クロージング日まで改善すること」といった事項が記載されることが多く、こういった条件を定めておけば、万が一トラブルが起きた際も安心できます。

 

3.クロージングまでの流れ

 

M&Aがクロージングするまでの流れは、一体でどうなっているのでしょうか?まずは、M&Aの全体的な流れを見て確認していきましょう。


【M&Aにおけるクロージングまでの大まかな流れ】
1:M&Aアドバイザーなど、専門家へ相談
2:秘密保持契約の締結
3:M&A先企業の選定
4:トップ面談および価格・条件交渉
5:基本合意書の締結
6:デューデリジェンスの実施
7:最終契約書の締結
8:クロージング


1.専門家へ相談

M&Aは専門的知識が必須になってくるため、専門家のサポートは必要不可欠。スムーズに取引を進めるためにも、まずはアドバイザーをはじめとする専門家に相談するのが一般的です。

とはいえ、1人もしくは1社の意見だけで全てを決めてしまうと、判断材料が少なく後悔する結果になってしまうことも。業務委託契約などを結んでしまう前に、他の専門家にも意見を求めるいわゆる「セカンドオピニオン」を実施しておくことをおすすめします。

2.秘密保持の契約

続いては、秘密保持契約です。M&Aは企業間の重要情報を提示しあうため、情報漏洩には細心の注意を払わなくてはなりません。あらゆるリスクを生まないためにも、秘密保持契約は必須事項です。

3. M&A先企業の選定

秘密保持契約を結んだら、M&A先企業の選定に入ります。あらかじめ定めている目的やねらいを元に、条件に合う企業を選びます。

4. トップ面談および価格・条件交渉

選定後はノンネームシートの提供や検討、ネームクリアなどを経て、いよいよトップ(経営者)同士の面談です。価格や条件を交渉するとともに、双方が納得できるよう疑問点や懸念点を話し合う場でもあります。

5. 基本合意書の締結

基本合意書は、「現時点での契約内容に双方が合意しているか」を示す契約書で、法的拘束力を持つわけでもなければ、最終決定額になっているわけでもありません。

記載されている主な内容は、取引の内容や役員・従業員の方針、スケジュールやデューデリジェンスに関する取り決めなどが一般的です。

6. デューデリジェンスの実施

基本合意書を締結したのち、対象の企業に対する細やかな調査を行うデューデリジェンスが実施されます。

デューデリジェンスで行う調査内容は多岐に渡り、財務や法務、人事など事細かに調査していきます。買収後のリスクを回避するためにも、売り手・買い手ともに重要な手続きだといえるでしょう。

7. 最終契約書の締結

そして、いよいよ最終契約書の締結に。基本合意書とは異なり法的拘束力を持っているため、締結後一方的に契約破棄した場合は、損害賠償を請求される可能性があることを覚えておきましょう。

8. クロージング

最終契約書を締結したら、ようやくクロージングの手続きです。最後の手続きとなるクロージングは、最終契約の内容を基に経営権の移転や株式譲渡、取得対価の支払いを完了させます。

中小企業であれば最終契約を結んですぐにクロージングを行うケースも多いですが、一定期間を有するのが一般的です。

 

4.クロージングに必要な手続き

M&Aにおけるクロージングは、事前に定めたクロージング条件や最終契約書を基に進められることがわかりました。M&Aの最終手続きであるクロージングですが、用意する書類なども多く、注意が必要です。

そこでここからは、クロージングに必要な手続きについて、「株式譲渡」、「事業譲渡」、「合併・会社分割」、「株式交換・株式移転」に分けてそれぞれ解説していきます。

クロージングの流れ1:株式譲渡

利用されることが多い株式譲渡は、売り手企業の株主から保有する株式のすべて、もしくは一部を譲渡する取引を指します。株式の売買で経営権を譲渡できるほか、引き渡す資産もシンプルなので、比較的手続きがスムーズな方法といえるでしょう。

M&Aで株式譲渡を選んだ場合のクロージングは、売り手側が買い手側に株券を引き渡し、買い手側は売り手側に株式代金を支払う手続きで完了します。クロージングの際には、株式譲渡を実行するための書類がそろっているか、書類に署名や押印はされているかなども確認の上、会社で使用している印鑑や通帳といった細かな物品も引き継ぎが行われます。

ちなみに、売り手側が提出する書類は以下のようなもの。
・株主名簿
・株式譲渡承認請求書と承認書
・取締役会の議事録
・株主譲渡委任状

買い手企業の手続きとしては、臨時株主総会や代表取締役の選任および登記なども行われます。

クロージングの流れ2:事業譲渡

事業譲渡は、会社における事業の一部、もしくは全てを第三者の企業に譲渡する方法のこと。株式譲渡と異なり、商品(モノ)や不動産といった有形のものから、ノウハウ、人材、取引先など無形のものまで、あらゆる財産が対象となります。

契約によっては譲渡の対象となる資産や負債を選べるため、売り手側にとっては「自社に残す事業」と「売却する事業」を選択できるメリットが、買い手側にとっても「必要な事業」だけを買収できるため、リスクを抑えられるといったメリットが生じます。

しかしその一方、売り手・買い手企業ともに手続きが煩雑になってしまうデメリットも。必要な手続きが多いので、その分時間もかかってしまいます。その結果、クロージングは1日で終わらないケースも少なくありません。

「事業の全てを譲渡する」「事業の全てを譲受する」といった条件で進められる場合、特別決議が必要になってくることも。発行済株式総数の過半数にあたる株式をもつ株主が出席し、その議決権の三分の二以上の多数によって進められる決議のため、時間がかかってしまいます。

クロージングの流れ3:合併・会社分割

M&Aにおける「合併」は、複数の法人格を単一に統合すること、一方「会社分割」は単一の法人格を複数に分割する方法を指します。

合併は、すでに存在する会社の権利義務の全てを他の会社に引き継ぐ「吸収合併」と、新たに設立する会社に既存の権利義務の全てを引き継ぐ「新設合併」があります。

どちらにしても会社に大きな影響を与えるため、株主総会による特別決議や、債権者保護手続きが必要となります。会社内で大きな変化がある場合、債権者にも影響を及ぼしてしまうもの。債権者保護手続きを行うことにより債権者に組織再編を行うことが通知され、一定期間債権者が意義を申し立てられるようになっているのです。

クロージングの流れ4:株式交換・株式移転

株式交換は既存の会社同士が、親子会社になることを目的に行われる手法です。

特別決議は必要ですが、債権者保護手続きは原則不要とされています。株式取得に関する計画届出書などの提出手続きはあるものの、合併・分割と比較すると手続きはスムーズに行えるでしょう。

 

5. M&Aのクロージング後に行うPMI とは

公的な手続きはクロージングが最後であるものの、「M&Aは買収して終わり」ではありません。効果的なM&A 、つまりシナジー効果を高めていくには、クロージング後に行われる経営統合(PMI)のプロセスが非常に重要になってくるのです。

せっかく良い企業を買収できても、優秀な人材が流出してしまったり、モチベーションの低下により作業効率が落ちてしまったりすれば、シナジー効果は生まれません。企業をつくっているのは「人」ですから、PMIを進めていく過程で「売り手企業の従業員にM&Aの目的と未来に共感・納得してもらう」ことが大切になってくるでしょう。

しかしながら、異なる企業を取りまとめ信頼関係を築いていくのは容易ではなく、実際にPMIにおけるプロセスを間違ってしまったことで、優秀な人材の流出が起こってしまうケースはよくあるケース。

そんなM&A成功の鍵を握るPMIをサポートしているのが、私たちPMI総研です。PMIを成功に導いた事例や失敗事例などを解説する「PMIセミナー=PMIに成功している企業は何をやっているのか?」や、従業員の不安を解消する「コミュニケーションレター」など、経営統合をスムーズに進めるためのサービスを提供しています。

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