正しいPMI講座

【インタビュー】M&A後の人材流出を防ぐために

2021/10/05正しいPMI講座

M&Aは「クロージングを迎えて終わり」ではありません。経営統合プロセスをはじめ、さまざまな準備を怠っていると、従業員の人材流出が発生してしまうケースも。

企業を動かしているのは従業員、つまり人材ですから、人材流出はなんとか防がなくてはなりません。そこで今回は、実際にM&Aを経験したビジネスマン2名にインタビューを敢行。M&Aの概要や人材流出について詳しくお聞きしました。

 

M&A後の人材流出事例1:従業員約半数がリストラに…

まずお話を伺ったのは某メーカー(以下、A社)に勤めていたという、知的で爽やかな印象のA氏。「いま空港にいるんです」とはにかみながらも、過去の経験について語ってくれた。

A社は、自社の外注先であり、制御盤製造会社であるB社を買収したんだそう。

―M&Aの目的は?
元々B社は、外注先の制御盤製造会社でした。製造はかなり頼っている状態でしたから、色々とブラックボックス化しちゃっている部分もありましてね…。もちろん、企業間で取引をしていくよりも開発から供給まで一体化させたい、という思惑もありましたよ。

あとは、B社の社長さんが結構年配の方で。同様の悩みを抱えている中小企業は多いと思うんですが、経営者の高齢化と後継者不在問題もあって。

―ちなみに、買収時B者の従業員数は?
パートさん込みで100人程度でした。あまり大きくない会社さんでしたね。

―買収後、従業員数に変化はありましたか?
いやあ、パートさんを中心に50人ほど…。元々100人規模ですから、約半数がリストラされた結果になりますね…。

―約半数!それはすごいですね。一般的に「買収された側(売り手)」の人材流出は、「待遇や環境の変化」「企業文化の違い」などで退職する方が多いと思うんですが。「リストラ」に至った経緯なども教えていただけますか?
先ほどお話したM&Aの目的ですがね、実はそれだけではなくて。会社がM&Aを検討しはじめたとき、B社のほかにも数社候補があがっていたんです。

技術力から将来性までいろんなことを調査した結果、私含め現場の社員たちはB社の買収は反対。もっとパワーのある会社もありましたから。

そういった内容のレポートも提出していたのですが、当時力のあった元社長とB社の社長に繋がりというか、まあ昔から長く仕事をしている縁があったみたいで。最終的にはその人間関係を理由に、買収合併を決めてしまいましたね。

―その結果は?
売却してたくさんお金を手にしたせいか、B社の社長さんは目標達成!とばかりに動かなくなりましてね…。それどころか、親会社であるA社の言うことを聞かない、グループの戦略を理解しようとしなかったんです。

正直B社の持っているノウハウっていうのは、特殊な技術ではあるのですが、やり方さえ共有できれば他の会社さんでもお願いできるようなものでもあって。「B社に頼む必要がない」と判断されてしまいました。

他の会社さんに頼むようになってしまったので、もともと50億円規模でお願いしていた仕事が半数以下の20億円減りました。人件費削減のため従業員の半数以上がリストラされる結果になってしまったんですね。

―ずばり、人材流出(リストラ)に至った原因は?
M&A先を選定するのに、「人間関係」だけを理由で決めてしまったことでしょうね。

買収前は綿密な企業調査を行いますから、そこで出てきた企業の特長や将来性、リスクなどをしっかりと見極める必要がありました。

M&A後の人材流出事例2:M&A後に突如訪れた、親会社の業績悪化

続いては、売り手企業側からの経験談です。

エンジニア不足が課題とされる中、オフショア開発で開発エンジニア人材を提供するE社を経営していたB氏。対する買い手側企業も同様に人材を提供する事業を展開し、業績が急成長していたF社です。

ともに勢いのある企業同士の買収で、順風満帆と思われていましたが…。

―本日はよろしくお願いします。早速ですが、E社について教えてください。また、元々M&Aは想定していましたか?
はい。E社は、IT開発など、ITに関する人材を提供するオフショア開発を展開していました。

開発を行なっているのは全て現地の人員で、全てオンラインで完結しています。プロジェクトにオンラインで参加するケースもあれば、丸っと現地でプロジェクトをやってね、というケースもある感じですね。

ちなみに、はじめから売却前提で創ったわけではないですよ。時代の流れにそって、どうすれば会社を大きくできるのか、どうすれば社員や顧客にとって最適な形になるのかを考えていった時に、出てきた選択肢ですね。

―なるほど。買い手企業、つまりF社がE社を選んだポイントはどんなところにあったとお考えですか?
F社は人材を提供する事業を展開しており、当時直近の数年で業績が急成長していました。そのためオーナーが積極的にM&Aをしており、既に数社をM&Aしてグループに参画させていました。

また、F社はグループ内にIT企業が無かったということもありE社に強く興味を持ってくれていました。

我々も、日本に拠点を探していて。日本で新たに拠点を構えていくよりも、人材ビシネスのノウハウがある企業との出会いを探した方が理にかなっていると思い、相手先を探していたところだったんです。なので、双方にとって良い出会いでしたね。

―ちなみに買収の金額は?
一般的なIT企業のM&Aの金額がEBITDAの5〜7倍と言われている中、EBITDAの20倍近い金額となりましたので、だいぶプレミアがついたのではないかと思っています。

―ここまでは順風満帆に見えますが、一体どんな問題が発生したのでしょう?
結論から言うと、親会社の業績が悪化してしまったんです。

F社グループの稼ぎ頭の事業の収益が急速に悪化。そこを皮切りに他の事業も業績は伸び悩み、事態はどんどん悪化。

我々の事業は人材を採用して教育していかないと伸びませんが、それには固定費がかかります。このM&Aでは、より早いスピードで事業拡大していくための資金面での援助や営業ツールの活用などを期待していたので、作戦を変更する必要が出てきてしまいました。

子会社が失敗した時の解決策を練っている親会社はあっても、なかなか親会社の業績悪化までは想定できませんからね…。

―確かに親会社の業績悪化を想定するのは難しいですね。ちなみにこのM&Aを通じて、人材流出などの問題は発生しましたか?

人材流出は全くありませんでした。人材があってはじめて成り立つ会社なので、最初からそこは重要視していました。

私がそのまま会社に残っているというのもありますが、従業員には「こういう目的のM&Aだよ」や「〇〇だからもっと成長するよ」など、親になる会社の成長感や安定感、期待感などをしっかりと伝えて納得してもらうようにしていました。

一貫したメッセージを従業員ひとりひとりに伝えていくのがとても重要だと感じましたね。会社名に変更があるのか、文化は変わるのかなど、人事部と連携してケアするようにしていた結果が実ったのだと思います。

あと親会社の業績悪化はありましたが、我々自体は売り上げも社員数も伸ばしているんです。M&A当時より4倍に伸びましたし、社員にとっても急成長している感じが伝わっていたのだと思います。

―改めて、売り手企業側が人材流出を防ぐために必要なことは何ですか?
やはりコミュニケーションだと思います。会社の今後や成長感、安心材料となるものをしっかりと伝えていくことが重要ですね。

我々の場合は、人事部と密に連携できていたのが功を成したと思います。丁寧なコミュニケーションで社員それぞれの不安を取り除いていく必要がありますね。

まとめ

M&Aを経験した方に、実施したM&Aの概要や人材流出についてお聞きしました。

M&Aは必ず成功する手法ではありませんが、事前準備と調査、従業員同士や経営者とのコミュニケーションを取ることが非常に大切です。

M&A後の人材流出を防ぐためのポイントはこちらの記事でも紹介しているので、ぜひご覧ください。

>>M&A後の人材流出を防ぐには

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